雑誌『国際グラフ』(2009年4月号・P63)にて、俳優:横内正さんにインタビューしていただきました。
対談:篠原一嘉・素介×インタビュアー 横内正(俳優)

横内:静岡でかに料理を楽しめるお店は少ないというイメージがあるのですが、まずはこれまでの経緯からお聞かせ下さい。

篠原:サラリーマン生活を経て、調理師学校に通いながらお茶漬けとおむすぎの店を始めたのが昭和40年のことでした。その後、チャンスに恵まれて47年に当地に店舗を構え、それを機にかに料理専門店に鞍替えしました。また、平成6年には現在の店舗に建て替え、宴会場や常連のお客様用に半個室のカウンターも用意しました。

横内:生け簀には新鮮なかにを準備されていますが、かにを扱われるようになったきっかけといいますと。

篠原:京都の老舗に料理修業に出た友人を訪ねて京都へ行った折、西京極にあったかに料理を食べたのですが、そのおいしさに感動しましてね。以来、かに料理のお店を出そうと毎月一度、味を覚えるたけに妻と共に京都まで通い続けました。

横内:様々なご苦労もあったのでは。

篠原:店を構えてからが大変でした。当初は山陰から仕入れたかにを扱っていましたが、3年後にかにの価格が急騰しましたね、値段的にやっていけないと、試行錯誤しながら北海道から「ずわいがに」を仕入れることに。その頃、近くに競合店がオープンしてどちらが生き残るかと思いましたが、むこうは3〜4年で店を畳んでしまいました。

横内:勝因はどこにあったのでしょうか。

篠原:かに料理というのはあまり手を加えない料理がメインとなります。ですから良い食材を使っていればそう味付けにこだわる必要はないと、旬の良質のかにを求めた結果だと思います。

横内:素人質問で恐縮ですが、かには年間を通じて仕入れられるものなのですか。

篠原:「松葉がに」や「越前がに」のように期間限定のものも仕入れていますが、当店では「ずわいがに」をメインに「毛がに」「タラバがに」も季節に応じた産地から空輸で仕入れるようにしています。

横内:なるほど。では、ご子息の素介さんに伺いますが、いつお店に入られたのですか。

篠原(素介):5年前です。もともと将来は野球で頑張っていこうと大学まで続けていたのですが、ケガが原因で諦めざるを得なくなりました。そんな時にゴルフの青木功プロファミリーの杉山直也プロを紹介してくださる方がいてプロゴルファーを目指すことに。しかし10年続けましたが断念し、母に「違う生き方もある」と助言され、稼業を継ぐ決心をしました。

横内:お父様のご指導はいかがですか。

篠原(素介):先程、父は「良い食材を使えば味付けにこだわる必要がない」と申しましたが、実は頑固なまでに味付けに厳しいのですよ。でも私には調味料の配分も料理方法は具体的には教えてくれません。聞いても「勘」という返事がひと言返ってくるだけで、私が作った料理を味見しては必ず手を加えるという意地悪な師匠でして(笑)。

横内:でも、かえってその方が人は成長しますよね。では、ご創業前に京都のお店に客として通われたとのことですが、素介さんもそういった研究をされているのですか。

篠原(素介):お客様が実際に行ってみたとおっしゃる店やホテルなど、母も交えて三人で出向いたことはありますが、地元でかにを食すならやっぱり当店が最高ですね。

篠原:以前『かにステーキ』というメニューを食べた時は「プロの職人がよくもこんな粗悪な素材を使用するか?」と驚きました(笑)。他店に行っても「ここが一番」と戻ってこられるお客様が多く、私の流儀は間違っていなかったと実感しています。

横内:常に美味の追及を重ねておられるお店ならではのお話ですね。さて、今後の展望としましては。

篠原(素介):かにのおいしさと父の料理を多くの方々に知ってほしいとホームページを開設しましたが、その際にメニューも増やそうと和風料理にこだわる父を説得し、『かにコロッケ』や『かにグラタン』など洋風メニューも加えました。それが予想以上の反響で、お客様に喜んで頂いています。これからもかにをメインに、お客様に感動を与える料理を提供できる店、料理人を目指して取り組んでいく所存です。

篠原:先般、以前に生徒から講師に昇格して勤めていた調理師学校から講演依頼があり、その内容として私自身の人生を一冊のノートにまとめたのですが、ふりかえってみるとよくぞここまでこられたなと思いを新たにしました。一から始めるのだからと「一二三庵」と名付けた店ですが、息子が良い料理人になったら駐車場の片隅に再びお茶漬けとおむすびの店を開こうと夢を膨らませています。「おにぎり」ではなく「おむすび」というのは両の手で結ぶからで、愛情を込めたおむすびでお客様の心に感動を届けられたらと思っています。

横内:更なるご活躍を期待しています。


かにの一二三庵
〒417-0049 静岡県富士市緑町8-11
電話:0545-51-1008  FAX:0545-51-1808
駐車場有り・20台収容   定休日:水曜日
※12月は水曜日も営業(年末年始は12月31日・1月1日休み)
営業時間:11:30〜13:30/16:30〜21:00

※JR新富士駅・JR富士駅・JR吉原駅より車で約10分
※東名高速富士インターより約8分